東京ハードボイルド

インターネットを使い始めてからもうすでに20年以上の月日がたっていると考えるとなんだかぞっとする。

3年前に台北に行ったときのこと 第十二章 豚の足


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これは3年前に台湾へ行ったことを電子書籍化した文章を、ブログ用に追記、校正したものである。全部で十三章になっている。

前回までのあらすじ
40歳になる前に海外旅行へ行ったことないおっさんが、台湾へ一人で行こうとしてパスポートを取ったりする。航空チケットやホテルの予約などに奔走し、ようやく空へ飛び立つ。台湾に到着後ホテルへ向かい、すぐに観光に出かける。まずは行天宮に向かって人の多さに圧倒される。その後、近くにある占い横丁へ向かい占いを堪能し、腹が減ったので夜市へ向かうことに。夜市では思った以上に食文化の違いにカルチャーショックを受け、結果日本食の定食屋で夕食を食べ、翌朝の朝食を買うためにコンビニへ向かう。無事に朝食をゲットして翌朝、ニニ八公園へ向かうことにしたが、雨で誰も公園にいない。国立博物館へ向かう。博物館を堪能して総統府と台北駅に立ちよったが昼になり腹が減ったので小籠包を食べるためにさらに歩いた。しがし、小籠包をあきらめさ迷い歩いた先でラーメン屋に入る。ラーメンを食べることに成功したあと、ラーメン屋と同じデパート内にあるサウナに行ってみることにした。初体験のサウナでさらなる未知の体験をして、そそくさと雨の中を歩いてホテルに帰り、二日目を終えた。そして帰国の朝を迎えたのだが、日本が大雪で飛行機が飛ばない事態になり空港でただ何もしない時間が過ぎる。

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第十二章 豚の足

最後の晩餐

搭乗手続きを行う際にエバー航空から2000円分のお食事券を受け取った。どうやら餌付けして帳尻を合わせようと言う魂胆である。
この食事チケットは搭乗ロビー内にあるレストランや軽食店などで使えるようである。
私はモスバーガー以来コンビニで買ったお菓子しか食べていないので何か食べたいと考えていたのだが、ここまで来たので最後は台湾らしいものを食することにしようと、台湾らしいものを探して歩くとすぐに軽食店を発見した。
そこはショーケース陳列された惣菜を取り分けるタイプの貧乏ビュッフェ方式である。取り分け係のおばさんが引越おばさんに激似であることを念のため記しておこう。
おばさんは予想外の残業が発生した不満が全力で顔に出ている状態で、私は若干の躊躇いを抑えながら、並んだ惣菜の中から台湾らしさがあるものをチョイスする。ブタの足の肉。とりあえず焼いたウインナーのようなもの。
 
うーん、他に美味そうなものがない。
原材料が不明なまでに変色した何かが並んでいる。
 
こんなに空腹なのに、それでも私の中の疑心暗鬼は確固とした抵抗を示す。
飲み物も頼むことにしたのだがタピオカミルクティーがおすすめと、他のを頼んだら承知しないと言った眼光で、おばさんがめんどくさそうにアピールしてきたので流されやすい私はじゃぁそれでとタピオカミルクティーを頼んだ。
テーブルに座って今オーダーしたディナーを眺める。なんという色合いの悪さ。全体的にブラウンでコーディネートされたジャンクフード。そして味を想像するだけでタピオカミルクティーがそこにある違和感。

 

まず、ブタの足を齧る。
 
予想した通りのとても固い歯ごたえ。
そして、見た目に反してやや甘い。おばあちゃんのぽたぽた焼きみたいな甘いのか辛いのかよくわからない中途半端な風味。
次にウインナーを口に入れた。
あー、これはあの夜市の臭気の根源のスパイスが入ってる。
 
だめだぁ。これはだめだぁ。と熱中時代教師編の水谷豊みたいに変な訛りが入った言葉を念じて箸を置きタピオカミルクティーのストローを口にやり、大きく吸い上げる。
 
これもやはり単体で飲んだら美味しいがすでに口にしている食べ物との相性はどうやらよろしくない。とにかく何もかも甘い。
 
味はどうあれここで食べておかないと死ぬかもしれないと思ったので全力で完食した。
くれぐれも言っておくが個人的に合わないだけで台湾の料理はおいしいはずである。
 
食事を終えてまた待つこと1時間ほどでようやく飛行機に乗り込むこととなり、さらに機内で待たされた後に飛行機は動き出した。
機内中央部に座った私は遠くに見える台湾の夜景を人の頭の隙間からちらほら見ながら、キティちゃんの描かれた毛布を膝にかけ、少しだけうたたねをしていた。うたたねのつもりだったのが羽田へ到着する寸前に目が覚めた。機内にはアナウンスが流れていた。
 
予測はしていたが空港についてからの交通手段がない。
そのことについてエバー航空は対応を言及しようとしている。
今頼れるのはエバー航空だけなのである。
エバー航空の機内アナウンスによると羽田からの公共交通機関はすでに終了しており、振替輸送のバスが用意されているとのこと。
路線は3路線。新宿駅行き、横浜駅行き、東京駅行き。
このどれかに乗るか、もしくは空港ロビー内に用意された毛布を借りて始発が動くのを空港ロビー内ベンチで待つかの選択である。機内にはざわめきが聞こえる。
 
「近くのホテルに泊まろうか」
「そもそも駅まで行っても終電終わってるんじゃないの」
「終電どころか雪で動いてなんじゃない」
 
軽々しく不安を口にしてしまう人々がいる。私はそのような人々の悲観に暮れた言葉を耳にしながら、眉毛の裾をなぞるように台湾での苦境を懐古していた。
 
迷いは人をいつもダメにする。
 
直観に従え。
 
すでに私の答えは決まっていた。この先は台湾ではない。そうだ東京なのだ。
 
私はこう見えてもかつて新宿界隈でネットカフェ難民状態を数週間していたことがある。その時の経験から算出するとおのずとスケジュールは決まってくるのだ。
 
まず、空港のロビーで時間を過ごすのは得策ではない。明朝に交通機関が復活するかどうかも分からないからである。空港からのモノレールは強風などでも止まる脆弱性が存在する。したがって選択肢は振替バスに乗ることに絞られる。
 
振替バスには真っ先に乗らないといけない。誰よりも先に乗らないとすべてがうまく行かない。2便、3便とピストン輸送されるようだが1便に乗った人たちだけが、降りた先での選択肢が広がる可能性が高い。降りた先での滞在を考えるとホテルやその他の場所の確保は先行者優先になることは明白だ。
 
まず、横浜駅行きへ乗った場合は始発に乗るとしても横浜線で町田もしくは八王子へ向かうこととなるが、横浜線の下りの始発は早くないはずである。乗り換えの小田急線や京王線もしかりである。
 
東京駅へ向かった場合は駅周辺はどの施設も金額的にリーズナブルではない。タクシーを使って帰るのと何ら変わらない金額となる。
 
そうなると新宿駅行き一択となる。
 
また、新宿駅で始発を待つための方法として、バスが向かうのが西口であればネットカフェがある。南口であれば24時間のマックがある。東口の場合は歌舞伎町に行けば朝まで開いている喫茶店が多数ある。
すでに選択肢は固まった。後は如何に早くバスに乗り込むかが勝負となる。
そうこう考えているうちにキティちゃんの絵柄の航空機は日本の大地を踏みしめた。すでに土曜の夜から曜日は日曜に代わっていたミッドナイトプラスワン。25時である。
 
つづく