東京ハードボイルド

インターネットを使い始めてからもうすでに20年以上の月日がたっていると考えるとなんだかぞっとする。

3年前に台北に行ったときのこと 第八章 冷気と灼熱の間


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これは3年前に台湾へ行ったことを電子書籍化した文章を、ブログ用に追記、校正したものである。全部で第十三章になっている。
前回までのあらすじ
40歳になる前に海外旅行へ行ったことないおっさんが、台湾へ一人で行こうとしてパスポートを取ったりする。航空チケットやホテルの予約などに奔走し、ようやく空へ飛び立つ。台湾に到着後ホテルへ向かい、すぐに観光に出かける。まずは行天宮に向かって人の多さに圧倒される。その後、近くにある占い横丁へ向かい占いを堪能し、腹が減ったので夜市へ向かうことに。夜市では思った以上に食文化の違いにカルチャーショックを受け、結果日本食の定食屋で夕食を食べ、翌朝の朝食を買うためにコンビニへ向かう。無事に朝食をゲットして翌朝、ニニ八公園へ向かうことにしたが、雨で誰も公園にいない。国立博物館へ向かう。博物館を堪能して総統府と台北駅に立ちよったが昼になり腹が減ったので小籠包を食べるためにさらに歩いた。

第八章 冷気と灼熱の間

小龍

「台湾グルメ」と言われるほどの台湾の料理は人気があるとされている。
台湾情報で真っ先に来るのが料理だから一度は絶望したが食べたい。夜市のあのスメルに追い立てられた昨夜がなければ、私も素直に台湾グルメを楽しめたはずなのだ。きっとあの夜市とコンビニだけがおかしな匂いを放っていたに違いない。でなければあれだけ王様のブランチが特集を組むはずない。
谷原章介氏は良い奴そうなので間違いない。
少しの希望を抱いて何を食べるか考えていた。
ようやく外出先で使えるようになったwifiを駆使して、GOOGLEで検索してみるとあの美味しそうな小龍包の画像。アツアツの肉汁が中からジュワーッと溢れてきて何とも美味しいソレである。
ここから行くとするとちょっと電車移動で行けそうな感じのところを発見した。
「鼎泰豐」
ディンタイフォンと読むらしい。
道を聞くときの為に店名を覚える語呂合わせとしてビンラディン逮捕」と念仏のように脳内で唱えた。
台北駅から電車に乗り4駅ほど行ったところにある、忠孝敦化(チュウコウトンカ)と言う駅の近くに鼎泰豐忠孝敦化店があるようだ。早速台北駅からドラえもんドンジャラのチップのような切符的なものを購入し、電車に乗って忠孝敦化駅へ到着した。
 
駅を出て歩き始めてスマホを取り出し、グーグルマップを見ながら歩いているとそれらしき場所に辿り着く。昼時だからか知らないがたくさんの行列ができていた。
何を売っているのかと覗き見るとなんだか肉まんのようなものだった。私が探しているのは小龍包であって肉まんではないので、その行列を横目にまたグーグルマップを見ながら歩くのだ。
 
しかし、何度歩いてもそこに辿り着く
どうやらあの肉まんは小龍包らしい
しかも行列は減るどころか増える一方なのだ。
行列に並ぶか並ばないか悩みながらスメルを嗅いでみるが、どうやらあの変な匂いはしてこない。これは食べておかないといけない気もしないでもないが、行列に並べない病の診断を下された寒いのと待たされるのが嫌いな私は、物凄い勢いであきらめるのであった。
うーん、日本に帰ったら横浜の中華街に行くことにしよう。小龍包は中華街の方が美味しいに決まってる。
 
ついでに赤レンガ倉庫で「あぶない刑事」エンディングテーマソング
「冷たい太陽」ごっこをすると言う決意を固める意向を示した。
しかし、空腹のままでは何も始まらない。
当てもなく歩くが目にするのはやたら高級そうな店かとても汚らしい店か、日本のチェーン店しか見当たらない。私はじわじわと台湾で餓死する危険性を感じていた。
海外旅行での死因で餓死は聞いたことがないので、このまま死んでしまっては日本の恥部を生産してしまうのである。台湾で死んだらキョンシーになるのでそれはどうしても避けたい。
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ひたすら歩いたが周りは高級ブランドショップなどが立ち並ぶエリアやオフィス街と言った感じになってしまった。空腹がじわじわと私の精神をすり減らしていく。

雨は相変わらず微妙な細かさで降り続いている。どうやら迷子になった感が否めない状況である。幼稚園の遠足以来の迷子状態に、私の眉間のしわが劇画タッチになっていることが自分でもわかるぐらいの混迷を極めた。
 
帰ろう。日本へ帰ろう。
そんなビルマの竪琴の水島上等兵を帰国させたがる人たちのように、心の中で叫んでみても航空チケットの予約日は明日なのである。したがってひとまずホテルに帰ろうとGOOGLEマップを見てみると、どうやらとにかく北へ向かうことが重要なようだ。
北へ帰る人の群れは誰も無口で海鳴りだけを聞いているのが、津軽海峡では基本的なセオリーであるが、雨で人通りも少ない台北市内で、私は海鳴りではなく耳鳴りまでするほどの疲労を背負っていたのだ。
 
ひたすら徒歩で北上すると右手になにやらドームのようなものが見えてきた。
東京ドームの4分の1ぐらいの大きさのドーム。このドームだと武藤敬司もいつものシャイニングウィザードを躊躇せざるを得ない。
全然関係ないがブラック無糖のコーヒーを飲むたびに、グレート・ムタのことを思い出すのは私ぐらいで十分なのである。どうでもいい話だ。

 そのドームを横切ると大きな横断歩道が見えてきたので渡ろうかと信号を待ってみるが、一向に変わる気配がない。周囲を見渡してみるとなにやら地下道への入り口があった。台湾は地下道がどうやら好きらしい。

私は地下道にまた占い関連施設があるかしらと思いながら階段を下りて行った。しかし、地下道には何もなく人も一人もいない。
しかもかなり長らく歩かされても地上へ上がる方法が見つからない。これはどうやらポートピア連続殺人事件の地下と同等の困難な地下道である。「もんすたーさぷらいずどゆー」と壁に落書きがないか探してしまうのである。これもどうでもいい話だ。
 
空腹の上にさらに抜け出せない恐怖を抱えている私の目の前にようやく地上への光が見えた。階段を上がると目の前にはなにやら大型の商業施設がある。
どう見てもデパートだった。
精根尽き果て気味な私はそのデパートに入ってみる。
するとそこには日本と変わりない化粧品売り場があり、入り口の案内板には
「MOMO百貨店」
と書かれていた。
フロア案内には地下にフードコートがあると書いている。
これならハードルが低いと見込んだ私は早速エスカレーターを探し、地下へ降りて行ったのである。地下へ降りると案の定そこにはあの変な匂いはなく、ジャスコやニチイやイズミヤダイエーやそこらへんのフードコートと同じようなリーズナブルな油で揚げた食物のスメルが漂っていた。
しかも、今までどこに隠れていたのと言うほどの人の多さだ。
私はフードコートの中でも最も無難そうな食べ物を選ぶことにする。
日本語で「どんぶり」と書いているところへ向かい、I Don't Know!がヒットしたBabeの二階堂さん激似の店員に向かって言った。
「牛丼並」
――
二階堂はどうやら日本語がわからないらしい。
まさにI Don't Knowである。
みんなに愛を配る天使なんていないのだ。
そしてまさにGive Me Upなのである。
時刻は午後2時。
こちとら空腹に空腹を重ねているためジェスチャーで牛丼を表現する手立てもなく、仕方なくフードコートを立ち去ろうとするとなにやら奥の方に看板が見えた。
「麺家 三士」
林家三平桂三枝を彷彿とさせようとしつつも麺を前面に押し出したい時の咄嗟の対処法のようなネーミングにグッと来る。
その看板の横にはどう見ても坂本竜馬の絵が描かれている。
なぜに、台湾でラーメンで坂本竜馬なのかは不明だが
これはようやく食事ができるチャンスだと悟った私は早速そのラーメン屋へ入った。
 
つづく